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MONDEX
設立の経緯
MONDEXカードの仕組みは1990年に,当時,National Westminster銀行の研究部門に在籍していた,Tim Jones氏とGraham Higgins氏によって発明された。
当時,彼らはデビットカード(取引の時点で口座から代金を引き落とす仕組みのカード)より進んだ支払いシステムを研究するプロジェクトに関わっていた。ICカード(Smart Card)や,テレホンカードのような価値を内部に記録するストアード・ヴァリュー・カード(Stored Value Card)などの方式を検討していたのだが,どちらの方式でもあまり良い結果が出せずにいた。
諦めかけていた時に,デビットカードを拡張するのでは「キャッシュそのものを電子化する」と,発想を大きく変えたことで,このMONDEXシステムは誕生した。
1993年には,National Westminster (NatWest)銀行とMidland銀行,British Telecom (BT)の出資によって,MONDEX社が設立された。
1995年7月,Londonの南西110kmに位置するSwindon(人口約17万人)で最初の実用化実験が開始され,1996年5月までにカード発行数は10,000枚(NatWest・Midland両銀行の顧客ベースの21%に相当)に達している。
1996年7月18日には,国際展開のための統轄組織としてMondex International Ltd.が,世界17か国の企業の出資によって,Londonに設立された。(この際,NatWestはMondex Internationalに対して,MONDEXブランドを譲渡し,MONDEXに関わる知的財産権をライセンスした。)
Mondex Internationalへの出資企業
各出資企業はそれぞれの地域におけるフランチャイズ権が認められている。
- イギリス
- 香港およびアジア・太平洋の12か国・地域
- カナダ
- オーストラリア
- ニュージーランド
- アメリカ合衆国
注:1996年11月18日,Mastercard Internationalが,MONDEX Internationalの株式の51%を取得し,傘下に収めた。
MONDEXの特徴
電子の財布
MONDEXカードは,「電子財布 (Electric Wallet)」というタイプに分類される電子マネーである。簡単に言えば,財布の持つ「お金の出し入れをする機能」をそのまま電子したものだと考えればいいだろう。
通常の財布を利用して買い物をする時の一般的な行動パターンを考えてみよう。
- 自分の銀行口座からATM(現金自動預払機)などを使って現金を引き出す。
- 機械から出てきた現金を財布の中に入れる。
- 商店へ出掛けて商品を選び,代金を支払う。もし,つり銭があれば,それも受け取る。
‥‥などという風に表わせるだろう。
これが,MONDEXを使うと,
- 自分の銀行口座からMONDEXカードに現金を転送する。
- 商店へ出掛けて商品を選び,代金をMONDEXカードから支払う。
‥‥となる。
基本的には,現金の持つ全ての機能を網羅している,と考えて間違いないだろう。
「現金」の出し入れ
MONDEXカードへ銀行口座から「現金」を転送する際には,従来のようにATMももちろん使えるが,MONDEX対応の家庭用電話機や公衆電話を使えば,銀行にわざわざ行く必要すらない。カードの中に残っている金額は,小型のValue Checker(キーホルダー型のものなど様々なタイプがある)を通すことで確認できる。電子手帳のような「電子財布」に送り手と受け手の2枚のカードを差し込むことで,個人間のやり取りも可能だ。
現金と全く同じということは,落としたカードを拾った人間に使われる可能性もある。そのための工夫もなされている。まず,転送できる金額の上限が制限されている。イギリスでは£500(約\94,000)まで,香港ではHK$2,000(約\29,000)までとなっている。
もう一つの工夫として,ロック機能が挙げられる。自分の電子財布で4桁の暗証番号を使ってロックをすることで,落とした場合にも使われないようにすることができる。このロックの解除には,電子財布はもちろん,MONDEX取扱店などに設置されたロック解除端末(Card Unlocking Point)も使える。
MONDEXカードそのものは,現在,5種類の通貨を扱え,過去10回の取引の記録を入れることができるようになっているが,常に最新の技術を取り込めるよう,カード自体に2年間っという有効期限を設けている。MONDEX自体がどんな暗号方式にも対応できる柔軟な方式を採用していることもあり,この期限を利用して,より安全なハードやソフトへとシステムを更新できるようにするためである。こうすることで,システムを破られる危険も防いでいる。
こうした各種の工夫により,MONDEXは,現金と同じ便利さを保ちながら,現金を上回る便利さ・安全性を持たせることに成功している。
MONDEXでの買い物
MONDEXのシステムでは,ほとんどの取引をオフラインで行なえる。MONDEXカードのチップの中に価値情報とそれをやり取りするための仕組みが備わっているからだ。
従って,クレジットカードのように,オンライン網接続のための通信料金や,信用照会のための時間が必要ない。そのため,個々の取引を短時間・低コストで完了させられるので,ジュース1本,ガム1個といった非常に小さな取引にも十分に適用可能である。
実際,MONDEX対応のPOSターミナルを使えば,支払いはあっと言う間に終わってしまう。このPOSターミナルの中には,販売店のMONDEXカードを入れるようになっている。従って,お金のやり取りの基本的な原理はほぼ電子財布でのやり取りと同様だ。
実用化実験
イギリス (1995年7月〜)
Swindon
MONDEXの初めての大規模実用化実験は,1995年7月,イギリスのSwindon市(人口17万人)で始められた。現在のカード所持者は,約13,000人。この数字はMONDEX参加銀行の顧客ベースの30%が,MONDEXカードを持っていることを意味している。
加盟店数は約700店舗で,市内のATMでMONDEXカードに転送される金額の平均は£28,一方,MONDEX対応電話での引き出し額の平均は£21である。
Exeter (1996年10月〜)
EnglandのDevonにあるUniversity of Exeterでは,学生証兼用のcampus-cardが約12,000枚発行されている。ここで発行しているカードは,MONDEX電子財布としての機能はもちろんのこと,学生証,図書館入館証,立入許可証,学生ギルドの投票券などの機能も持ち合わせている。
MONDEXターミナルは,学内の販売所や各種のATM,公衆電話などに設置されている。
York (1996年10月〜)
EnglandのYorkshire州にある,University of Yorkでは,
カナダ (1995年11月1日〜)
カナダでのMONDEXの推進母体は,当初はCanadian Imperial Bank of Commerce(CIBC)とRoyal Bank of Canadaの2行であった。
カナダでの実用化実験は,1995年11月1日から,Torontoの北90kmに位置するOntario州Guelph市(人口10万人)で行なわれている。
その後,1995年12月4日に香港上海銀行グループのHongkong Bank of Canadaが加わった。
香港 (1996年10月17日〜)
アジアで最初のMONDEX実用化実験は,香港上海銀行グループが,香港島(Hong Kong Island)の太古城(Tai Koo Shing)と九龍新界(New Territory)の沙田(Sha Tin)の2か所で行なわれている。
カードに転送できる金額が2,000香港ドル(約29,000円)とかなり低い金額になっている上に,香港上海銀行グループと取引のある店舗でしか利用できない。今後,利用者の銀行の口座残高などに応じて,この転送可能金額の上限を変動するように検討しているそうだが,現状ではあまり使い勝手はよくないようだ。
このページの作成にあたっては,以下の文献を参考にしました。
- 上に挙げた各ホームページのコンテンツ
- Mondex Magazine Summer 1996 [National Westminster Bank Plc]
- Mondex International [Mondex International]
- これは本物のキャッシュなんだ〜モンデックスの挑戦〜 [朝日新聞社 DOORS 1995.11 p10-p16]
- 手探りの電子マネー [読売新聞 東京13版 1996年9月1日 朝刊7面]
- South China News & Review Vol.87 [KO PRESS CO.,LTD. 1996.11.01]
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(Dec.28.1996)
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