(Jun.12.1996)
GUIベースのOSと,CLIベースのOSとの大きな違いは視覚的な部分以外にもいくつかある。それらを順に挙げてみたい。
CLI OSではプリンタやグラフィック表示機構を直接操作するプログラムを記述しなければならなかったのに対し,GUI OSでは用意されたAPI (Application Program Interface)を通じ,定められた手順を経て間接的に周辺機器を操作するようになった。このことにより,アプリケーション・ベンダーが全ての周辺機器のためにそれぞれの制御ドライバを用意する必要はなくなり,ドライバの準備はどちらかと言えば周辺機器を供給するハードウェアメーカーの仕事となった。
しかし,問題もないわけではない。それぞれの分業体制が出来上がってしまうと,今度はその互換性の保証を誰が行なうのか,という問題が出てくる。例えば,「印刷が正常にできない」というトラブルが,ハードウェアの問題なのか,OSの問題なのか,プリンタドライバの問題なのか,アプリケーションの問題なのか,これを一般のエンドユーザーに分析しろというのは無理な話だ。
GUI OSが普及するようになって最も大きな変化は,やはり操作面だろう。CLI OSの時代には,各アプリケーションメーカーが,それぞれのアプリケーションに独自のキー操作体系を用いていた。そのため,他のアプリケーションに,あるいは他のアプリケーションから移行する場合には大きな障害となっていた。
GUI OSの時代に入り,それぞれのOSに標準的な操作体系が導入されるようになって,この問題はだんだん解消されつつある。
CLI OSの時代のアプリケーションというのは,各々がそれぞれの専用のデータ形式を持っており,少なからずのアプリケーションがそのデータ形式のみにしか対応しなかった。したがって,利用者は一旦あるアプリケーションでデータを作り始めてしまったら最後,他のアプリケーションに乗り換えることは非常な困難を強いられることとなっていた。もちろん,メジャーなアプリケーション同士での移行であれば,サードパーティー製の高価なデータ変換ソフトウェアを使うことも可能ではあったが,個人の利用者が払える額ではなかった。
GUI OSが主流になって以降,ほとんどのアプリケーションでは,CSV(カンマ区切り)やRich Text,SYLKなどの汎用データフォーマットの読み書きに加え,ライバル製品のデータ形式をもサポートするようになった。「乗り換えアップグレード」などアプリケーションの売り方の変化ももちろん理由の一つだろうが,ようやくソフトハウスがユーザーの利便性をきちんと考えるようになった,ということだろう。パソコン以外のワードプロセッサ専用機でも同じように「12社対応データ変換機能」などが売りになるようにもなった。
もう一つの変化としては,他のアプリケーションと併用することを前提としたアプリケーションが登場したことが挙げられるだろう。以前のアプリケーションは,例えば,データを作成することが主のアプリケーションであっても,利用者が他の印刷可能なアプリケーションを持っていないことを考慮して,印刷機能などもきちんと装備しなければならなかった。しかしながら,現在売られている低価格アプリケーションの中には,余計な機能が全く付いていないものも少なくない。
これは,GUI OS上のドラッグ&ドロップ操作や,汎用ファイルフォーマットによって,手軽にアプリケーション間でデータのやり取りができるようになったこと,またOS自体のアクセサリとしてちょっとしたアプリケーションが添付されるようになり,ベンダー側であまり心配することがなくなったこと,などが理由だと考えられる。
アプリケーションが肥大化する一方で,こうしたモジュール化の発想が登場し始めている。
ミクロな部分ではさまざまな変化が起きてはいるが,マクロの視点で見れば基本的に変わらないこともある。それは,ソフトウェアというものが人間の経験やノウハウを元に設計されているという点である。
例えば,こんなものが挙げられるだろう。
挙動不審な利用者をチェックする機構や与信枠の設定などは今まで経験者が実際に感じたものをソフトウェアの形にしている。
どのような形で情報をまとめあげていくか,視覚的にどう各データを結合していくか,という部分は,人間の発想方法をどうソフトウェア化するか,だ。
(これはPCではなく,制御ソフトウェアという分類に入るであろうが)「はじめちょろちょろ中ぱっぱ,赤子泣いても蓋取るな」という炊き方の大原則,それからご飯の堅さの加減などは完全に人間の経験や感覚をソフトウェア化したものである。
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